YEMEN MOCCA SANANI

10年くらいぶりのイエメンがkaffaにやってきました。

Royalさんから買ったYEMEN MOCCA SANANI 。6月に豆が届いて、カッピング参加者に小分けして売った際に、麻袋を開いて初対面してから数カ月。ようやく、焙煎してみることができました。

生豆の見た目がひどい。匂いもフルーティではない、醤油蔵みたいな匂いがある。「あー、とんでもないもの買っちゃったな。」と後悔しながら、選別をする。4kgの生豆から3kgに減った。それでも、薄茶の綺麗とは言えない豆たち。サイズもバラバラ。全体に小粒で、とんでもない小粒もある。どれも枯れた感じ。「こんなんで味があんのかな?」とも思う。

でも、選別を進めるに従って、絶望の中に、根拠が無い期待が、生まれてくる。「味わったことのないくらい美味いコーヒー」かも知れない。今までのエチオピアハラーだったら取り除かれるであろう見た目の豆たち。でも触っていると何かが違う。硬く締まった感じ。何せ見たことないから。こんな生豆。まあ、この期待はその時点では、とてもはかないものだった。希望なしに選別はできないからね。

翌日、焙煎人に焙煎してもらいました。かなり深めに。

すぐさま、一杯淹れてみました。普通、焙煎直後のコーヒーはおいしくないです。だから、期待はしてませんでした。ただ、「まあ、飲めるコーヒーであってほしい。」と思って。なんせ、あと100kg以上ある。しかも今回仕入れた豆では最も高価!こんなに汚くても、至宝イエメンモカなんだから。

驚きました。驚きというより、たぶん舞い上がった。今まで生きて来て、最高に美味いコーヒーだった。僕が求めるコーヒーがそこにあった。到達した!甘くてトロッとしてスムーズでチョコレートの酸味が残って。

その後、数時間を経て、確認のためにもう一杯。「あー、これがモカ!」甘い香りと味に包まれる。

売れないコーヒー屋として、25年。ついに経済的に全く心配のない状況が訪れた!これが売れないわけがない。飲んだ人は必ず買うだろう!

いつもコーヒー淹れててお客さんに聞かれる。「おススメは?」。プロの端くれとしては、まあ、口籠もりながら「kaffa blendですかね。」と答える。が、全く自信はない。まず、他人の好みはわからないから。でも、最も重荷なのは、自分ですら、このカップが美味しいという自信はないのだ。

これがコーヒー屋としてどれほどの重荷であるか。僕にとっては、常に腹だか胸だかの奥に息苦しい結び目が存在するひとつの大きな原因だと思っている。

しかし!このイエメンがあれば!人生が変わる瞬間。神の降臨。アッラーフ・アクバル。

翌日、僕はまた、地獄にいた。朝、期待を込めて淹れたイエメン。無茶苦茶だった。甘い香りも味もなく、尖った苦味が強すぎる。もう一度、試す。不味い。

結局、その日、4回淹れて、神に会うことはなかった。神どころか、不味かった。

翌日の「クリスマスマルシェ at T omioka」のイベントで淹れる予定の焙煎豆だったから、その夜は気が重かった。明日になれば、少なくとも、提供できる味になっていることに望みを託して寝た。焙煎直後から数日は味は基本的に落ち着くほうこうに変化するから。

翌朝、まずイエメンを淹れる。まずまず、というか、昨日の荒れた感じは消えている。落ち着いて、トロッとしたボディを感じる。微かにだが、チョコレートの酸味がある。これなら、出せる。少しホッとする。

だが、初日の神はいない。

そして、焙煎から6日目の今日まで、徐々に美味くなってる。とても美味いコーヒーだと思う。でも、神はいない。

考えてみれば、当たり前かも知れない。あれが常にあれば、コーヒーの世界はイエメンモカに席巻されるだろう。kaffaがあれを常に売れば、大金持ちになるだろう。というか、あれが意図的、技術的に生み出されるなら、スターバックスがやるだろうし、ネスレやUCCがやらないわけがない。

あれは、一瞬の夢?いや、たぶん、イエメンモカサナニを続けていれば、また会えるに違いないし、その微かな片鱗なら、常にカップにできるくらいになるかも知れない。

いづれにせよ、YEMEN MOCCA SANANI とは、これから生きてる限り付き合っていただくことになると思う。

すごい豆に出会えた。コーヒーに関する僕の経験則をことごとく粉々にして、大きなギフトを残してくれた。

アッラーフ アクバル!

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